昭楽作 弘入「春の雪」うつし黒茶碗
胴裾に、徳川頼倫公から拝領された「樂」の印を模した装飾がなされ、その部分を黄刷毛状に施釉した弘入が得意とする作行きである。
力強い茶碗で小振りに引き締まった高台は土見せとなっており、畳付きを広く取り、高台内側は深く削り込まれており、その高台脇には「八樂印」と呼ばれる石山丈山筆の「樂」印が捺されている。
この「春の雪」という茶碗は、以上のことから、弘入が63歳で隠居する直前の作と読み取れる。
箱には表千家12代惺斎宗左が以下のように書付けをしている
「吉左衛門作 黒茶碗 銘春の雪 左」
厚く施された黒釉は幕釉になっており、その釉切れにははっきりと白く蛇褐がみられ、あたかも山々に残る春の残雪を思わせる景色となっている。